共産主義者同盟(統一委員会)






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■『戦旗』1631号(3月5日)3面

 
〈国際女性デーに寄せて〉
 ウクライナ侵略戦争と女性解放
 
  
                    
                      
三橋貴子




 ロシアによるウクライナ侵攻開始から、一年以上が経過した。正確な情報は伝わってこないが、両軍で約二〇万人、ウクライナの民間人七〇〇〇人以上といわれる死者と数多の難民を生み出しながら、長期化している。ウクライナにおいては、多くの女性が性暴力を受けた上で虐殺されていると報じられてきた。
 一九〇四年三月八日にアメリカの女性労働者たちが、女性の解放を求めて起ち上がった記念の日である一一九回目の国際女性デーに寄せて、私たちは未だ女性が戦争の犠牲になり続けている現状と、女性の軍事動員が世界的に拡大していることへの否を訴えたい。


●1 戦時性暴力を許さない!

 かつて日本軍はアジア侵略において多くの女性をレイプし虐殺し、日本軍性奴隷制度の下で強制連行した女性を「慰安婦」として連れまわすことを公然と行なった。その謝罪と補償、記憶と反省は未だに遂行されていない。二〇〇〇年に東京で開かれた「女性国際戦犯法廷」では、原告として八か国七八人ものサバイバーたちが集まり被害を証言、加害兵士の証言も行なわれ、軍隊の指揮官たちや最高指揮者としての天皇が断罪された。日本国内メディアはこれをほとんど報道せず、歴史修正主義者らは、証言に立った女性たちとこの法廷に対して、強烈なバッシングを行なった。しかし、国家・軍隊が遂行した戦時性暴力が問題化されたこと、植民地支配=人種差別・民族差別とジェンダー差別が交差する中で暴力的に行使された性差別の加害責任が、国家・軍隊にあると判断されたことは、国際的には注目され評価されてきた。
 一九九二~九五年の旧ユーゴスラビア紛争では、「レイプキャンプ」と呼ばれた場所に数百人の女性が収容され、組織的な性暴力が行なわれた他、二万~五万人が性暴力の被害に遭ったといわれている。九六年から続くコンゴ紛争でも、四〇万人ともいわれる女性が性暴力の被害に遭っている。これらの事実を受けて、性暴力が武器として戦略的に使われてきたことが国際的に認識され、一九九八年には国際刑事裁判所を設立するローマ規定が採択され、組織的な性暴力が戦争犯罪として定義された。にもかかわらず、四半世紀経った現在も、女性への性暴力が軍事戦略として行使され続けている。
 第二次大戦の「捨て石」にされた沖縄では、多くの女性が戦後七八年にわたって米軍による性暴力の犠牲になってきたことも、続く戦時性暴力と言える。にもかかわらず日本政府は沖縄に75%の米軍基地を押し付け続け、更に琉球弧の軍事要塞化=戦場化を進めようとしているのだ。
 女性の軍事動員は男女平等じゃない! 女性の戦争動員を許さない!
 ウクライナ戦争では、ウクライナ女性の被害が報じられる一方で、武器をとり戦う女性兵士の姿が注目を浴びている。二二年末の統計では、兵役に就いたりあるいは義勇兵として戦闘に参加したりする女性が、ウクライナ軍の25%を占めているという。ウクライナ政府は公式SNSで、女性兵士たちの姿を前面に出して盛んにアピールすることを政略的に行った。狙う効果の一つは、ウクライナ国内の男性に対するものである。国民総動員令により成人男性の国外避難が原則禁止される中、あえて国に残って戦う女性を取り上げることで、「女ですら戦っているのに、逃げようとする男は卑怯者だ」と、プレッシャーを与えようとするものだ。対外的には、女性が懸命に戦う姿を前面に出すことでウクライナへの同情・共感が高まると考えてのことだろう。戦時下において、女性はそのようにも利用され続けて来た。
 ウクライナだけではない。世界的に見ても、各国軍隊における女性兵士の割合が非常に高まっている。アメリカ軍においては、二〇世紀初頭には、女性は看護部隊に参加するにとどまり男性と同様の賃金や手当、階級からは外されていた。女性が完全な軍の一員として加わるようになったのは一九四四年、以降徐々に割合を増してきたのだが、二〇一五年に女性の戦闘任務参加が全面的に解除されてからは、飛躍的に増加している。


●2 岸田大軍拡と女性の戦争動員

 日本における女性自衛官の割合も年々増しているが、それでも全体の8%。「令和四年版防衛白書」では、「女性の活躍推進」のために「女性自衛官の配置制限の解除」「女性職員の採用・登用の拡大」に取り組み、二〇三〇年までに女性自衛官の割合を12%に引き上げることを目指すとしている。男性の人材不足を背景に、二〇一五年安倍政権の「女性活躍推進法」によって自衛隊も女性への門戸開放を促進していった。二〇一一年の東日本大震災はじめ度重なる大災害を契機に、自分も災害救助の仕事をしたいと望み入隊する女性も増えたという。陸自在職中に性被害を受けたことを告発した女性もその一人だった。
 東日本大震災当時、小学生だった女性は津波で家を流された被災者だった。避難所で目にした女性自衛官の活動に感謝し憧れて、同じ道を目指した。しかし所属した部隊で待ち受けていたのは、日常的なセクハラ・性暴力であり、心を壊され退官を余儀なくされた。自衛隊の総務・人事課にあたる一課、犯罪捜査を専門とする警務隊にも被害報告を上げたが、加害当事者らは事実を隠蔽。「このままでは同じことが繰り返される」と、ついに自ら実名と顔を晒して告発するに至ったのだ。一年半の過酷な闘いの末に、加害隊員らと、適切な対応をしなかった上官らも含めての処分が行なわれたが、真摯な反省を感じ取れなかった女性は一月三〇日、国と加害者五名を相手取って損害賠償を求める訴訟に起ち上がっている。
 この事件を受けて、防衛省は特別防衛監察を行なった。一一月末時点で、一四一四件ものパワハラ・セクハラ被害の申し出があった。しかしこの一四一四件が全てでは当然無いだろう。彼女の闘いに、「私も」と多くの女性自衛官が被害経験を告白しているが、一方で酷いバッシングも行なわれており、壮絶な闘いを被害女性が強いられる社会であることが改めて浮き彫りになった。他国=米軍においても、セクハラは横行しており、女性兵士の置かれる状況は同様だ。
 女性の軍隊参加は「男女平等」なのか? 「フェミニストは女性の権利を主張するくせに、兵役の平等は言わない」という批判が男性の側からされてきた。二〇二〇年から、一七歳以上の女性にも徴兵リストへの登録通知書を送付するようになったオランダのバイレフェルト国防相は、「女性と男性は平等の権利を有しているだけではなく、平等の責任も負っている」と語っている。
 女性解放・女性の権利を主張してきた多くの人々は、「男性と同じように」「男並みに」なることを求めてきたのでは決してない! 女性がその特性によって担わされてきた仕事や役割が低く見られ、正当な扱いを受けてこなかったこと、女性の特性が男性の基準によって「適性ではない」とされ排除されてきたこと、諸々への否と権利主張であって、男性と同じように武器を手にし殺戮する権利を主張してきたわけではない。軍隊内において、戦場において、女性兵士が「癒し」やセクハラの対象であることを求められているのであればなおさらだ。
 私たちは女性の戦争動員を許さない! 岸田政権の大軍拡を許さない! 団結して共に、「最大の差別」である戦争への道を阻止しよう!

 


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